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『マイバケットリスト』#11

Ocean waves crashing along coastline beach reef point

『世界の行ってみたい100サーフポイント』

南アフリカ   J-BAY “

名画『エンドレスサマー』に登場する南アフリカの波は時代を超えて、世界最高の波と言われている。

 1964年に撮られたサーフィン・ドキュメントの代表作『エンドレスサマー』は500万円という低予算で制作し、
全世界で当時30億円以上の収益をあげたと言われる、永遠不滅のサーフィン・ムービー。

本格的なサーフムービーとして製作者とサーファー2人のたった3名で作られた異色の映画として知られている。

そして、それから約30年後の1994年にはリバイバル作品とも言える『 エンドレスサマー2』が公開された。
若いパット・オコーネル、ウィングナットの二人が主役を務め、トム・カレン、ケリー・スレーター、ジェリー・ロペスなども出演して再びヒットした。

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遠い場所なので、一生に一度行ければと思い描いていた『ジェフリーズベイ』
地の果てアフリカの最南端。

広い国土と複雑な歴史により、黒人(ズールー族、コーザ族、ソト族、ツワナ族等)、白人(オランダ系、イギリス系等)、カラード(混血)、アジア系(インド人等)で構成されている。
アパルトヘイトという苦難の歴史を克服し、南アの国民は、「七色の国民(レインボー・ネイション)」と呼ばれている。

香港経由で行くはずが、台風が香港を直撃したため、振替え便はオーストラリア経由の南アフリカ行き。
シドニーでの長いトランジットを経て、ヨハネスブルグでさらに乗り換え、ポートエリザベス空港へ。
ジェフリーズの宿に着いたのは、夕刻になっていた。

『いったい何時間かかったのだろう』

宿の前には海が広がり、広い湾の中に入ってくる波が綺麗に右から左に崩れている。

心底疲れた身体。しかし、目の前で良い波が割れていると、サーフィン好きとしては
疲れた体に覚醒した気持ちが勝り、海に入る準備をする。

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2日ほど早く来た知り合いが、丁寧にパドルアウトする場所を教えてくれる。

「岩は、成長しているムール貝が鋭いので、出入りするのに注意してください。
水温はそれほど寒くはありませんが、足を切るのは普通のことですよ。』

南半球の真冬に当たる7月後半から8月には冷たい風が吹く寒可能性があるため、適切なウエットスーツとブーツが重要らしい。

『その先の岩と岩の間にチャンネルがある』と指差してくれるが、よくわからない。
尖った岩の上に乗り上げないよう、慎重に足を進め、大きな波が砕けた瞬間に、大きくジャンプして、沖へ向かう。

長い壁が続く良い波だ。

Mandatory Credit: Photo by Kelly Cestari/WSL/REX/Shutterstock (8964493ee) Pumping overhead conditions greeted the Corona Open J-Bay at Supertubes, Jeffreys Bay, South Africa. Corona Open J-Bay, Eastern Cape, South Africa – 18 Jul 2017

暗くなる前に何本か乗って本日は終了した。
大きなアフリカの夕陽は満喫した一日の締めくくりに真っ赤に燃え、鳥や虫のさえずりと夜の静けさが漂ってきた。

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ジェフリーズベイは、良い波の典型とも言える。
テイクオフすると乗った波がサーフボードを押してくれ、どんどんスピードが出てくる。

 「世界で最も速い波」『クラシックなポイントブレイク』の見本だ。
高速の波の壁と樽を転がしたようなチューブセクション。

世界大会が開催されるだけあって、波質は抜群に良い。
とは言っても毎日あるわけでなく、滞在した最初の2−3日が良く、中間の3−4日は少し小さくなり、
帰国前の2−3日にまた良くなった。

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歩いていける近くのスーパーは大きく、薪から、食料品、飲み物まで全て揃っている。

多民族国家であるため、一般的な食事は英米風で、休日には「ブライ」と呼ばれるバーベキューを楽しむ場合が多い。
野菜や豆をたくさん入れた煮込み料理が伝統的な家庭料理らしいが、
夕食は、ステーキやフィシュ&チップスなど、興味を引くのがワニ、インパラ、ダチョウなどの猟鳥獣料理。

ぶどう栽培に適した地中海性気候と肥沃な土地に恵まれたその周辺では、ワインづくりが行われてきたので、南アのワインは全世界のへの輸出も増えている。

お洒落なレストラン、美味しく安いワイン、物価は想像以上に安い。

夕方散歩がてら、買い物に行くと小さな街なので、海で会った人が声をかけてくれる。

『今日良い波乗ってたね』

『朝は人が少なくて最高だよ』

『これから、ビールとワイン飲むから一緒にどう?』

夕刻からは、宿やレストランも暖炉に火が入って、ワインと一緒に冷えた体を暖めてくれる。

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朝暗いうちから目が覚め、しばらくするとうっすらと明るくなり始めた空が赤く染まり、
波を照らし始める。

ひんやりとした冷たい空気が一層光を綺麗にしている。
ジェフリーズベイのサンライズは格別だ。

乾ききっていないフルスーツに着替え、海に向かう。
宿から続く、木の階段を降りて、ビーチへ向かう、朝の空気の匂いが漂う。

何日かメインポイントでサーフィンしたが、今日は、歩いて15分ほど離れた場所に向かった。

岩の切れ目から波が割れ始め、その先は砂浜になっている。
『何というポイントなのか?』
2−3人サーフィンしているので、朝飯前の1ラウンドを楽しむ。

それにしても良い波だ。
誰かが言っていた『誰でも上手になったように乗れる』
ここはロングでも、ショートでも、ツインでも誰でも上手く乗れそうな気がする。

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到着後、2−3日あった波も落ち着き、観光気分でケープタウン方面へドライブがてら、波探索。

1990年代にマンデラ大統領就任によって、アパルトヘイト(人種隔離政策)は完全に消滅したと言われているが、
豊富な天然資源を有し、特に金の埋蔵量は世界上位に位置する。その為、群を抜いたアフリカの経済大国であり、
貧富の差は拡大しているようにも見える。

アフリカ系の濃色の人々が暮らす街を抜け、幾つかの丘を越えた岬の先端で波が割れている。

ジェフリーズが小さくても、数時間ドライブすれば、十分な波がある。
西のケープタウンは、ビッグウエイブとして知られているし、東部の町ダーバン、イーストロンドンにも数多くのポイントがあり、
サーフィンの人口も多い。

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帰国が近くづく2−3日前から、南西の風が強まり、うねりが大きくなってきた。

海を見ると、湾の右側から大きな幾つもうねりの筋が見える。
朝焼けに映えて、波頭を岸からの風が整えている。

サーファーが右端からテイクオフした、上下のターンを繰り返すとスピードが増してくる。
見てる真ん中の速い場所を通過し、左側の方へ突っ走っていく。

気持ち良さそうだ。
昔のビラボンの標語『ONLY SUFER KNOWS THE FEELING』を思い出す。

夕刻が迫り、陸側の空が釉薬に染まる頃、湾の左側から数十頭のイルカの群れが、波と戯れジャンプしながら沖へと向かっている。
サーフィンを楽しむイルカ達を見ていると心穏やかな気持ちに浸り、またここへもどって来たい気持ちが湧いてきた。

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サーフィン映画の名作を成功させた後日談、

 当時28歳のブルース・ブラウン、そして21歳と18歳のマイク・ハインソン、ロバート・オーガストの2人のカリフォルニアのサーファーは、
世界中を旅すれば必ずどこかに夏があることを利用して世界中の夏と新しい波を追い求めていく旅の計画を立てて実行に移していき、

 撮影は3年6ヶ月を要した。訪れたのは、初めて入る不安の中でのセネガル、未開の地でフレンドリーな地元の人たちと触れ合うガーナ、水温30℃のナイジェリアそして、ヒッチハイクと砂漠横断の末にたどりついた究極の波南アフリカ。

ハプニングの連続や新発見などをドキュメンタリー風に仕上げたストーリー構成はサーフィンを知らない人々の冒険心をもくすぐり、
当時の「ライフ」「タイム」「ニューヨーカー」「プレイボーイ」誌などで絶賛され世界的にも大きな話題となった。

監督で大きな名声を博したブルースにはさまざまな企画の申し込みが殺到した。

そのうちの一つはTV番組プロデューサーがブルースにサーフィンのTV番組を製作しようと持ちかけた。
「君がサーフィンのシリーズ番組を作ってくれたら僕が売り込むよ。」

しかしブルースにはTV番組は興味がなかった。

彼の関心は家から2ブロック先のオフィスで、彼の前作映画の上映の準備をすることや、家の裏山で狩りをしたりすること。

サンオノフレかドヒニーでサーフィンか、崖でクレー射撃を楽しむこと。

または、バハまで出かけてモーターバイクに乗ったり、カジキ釣りをしながら釣りの映画を考えたりすることだ。

もう充分なお金は稼いだのだから。

  

ライター;南 夏海
大学在学中からサーフィン出版社に出入りし、
東南アジアサーフトリップ、創業。
映像、ライセンスビジネスなどの会社設立。
ブランドオーナー、サーフクルーズCO-OWNER。
早稲田大学卒。

  

》次号2019年11月は台南(台湾) 編《

    

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